最初の放送があってから一週間後。
参加者リストとそれぞれの仮装が記された紙が、
張り出されていた。
メインの参加者は全部で11組、22人となり、
さらに、すべての隊で、
何人もの席官が仮装することになった。
そして全員参加が四番隊、九番隊、と十一番隊となった。
「あの四番隊が全員参加とは驚きですね。」
「なんだかかなり乗ってるみたいだぜ、みんな。」
いつものメンバーに一護と乱菊を足し、
全員がまた十番隊執務室でくつろいでいた。
「参加者リスト、誰か持ってるか?」
「ん、ほい。」
といって、修兵が折りたたまれた紙を一護に渡した。
一護はついさっき来たばっかりだったので、
まだ見ていなかったのだ。
「えーと、何々―…」
『参加者リスト:
黒崎一護
| ミイラ男
|
日番谷冬獅郎
| 魔女っ子
|
阿散井恋次
| 狼男
|
朽木白哉
| ドラキュラ
|
市丸ギン
| 妖狐
|
吉良イヅル
| 巫女さん
|
檜佐木修兵
| マフィアの幹部
|
東仙要
| 警官
|
斑目一角
| 海賊・1
|
綾瀬川弓親
| 海賊・2
|
京楽春水
| 軍服
|
伊勢七緒
| 軍服(鞭)
|
卯ノ花烈
| 貴族婦人
|
虎徹勇音
| 騎士
|
藍染惣右介
| ロミオ
|
雛森桃
| ジュリエット
|
四楓院夜一
| 魔女
|
砕蜂
| 黒猫
|
更木剣八
| 海賊船長
|
草鹿やちる
| 海賊・3
|
浮竹十四郎
| 病弱の父親
|
朽木ルキア
| その面倒を見る娘』 |
「うっわ、すんげー数。」
「というか、日番谷隊長の魔女っ子って…。」
一護と乱菊以外の全員が、
冬獅郎に怪しげな視線を向けた。
それを感じて冬獅郎は顔をしかめる。
「それ、私がそう登録したのーv」
「え?乱菊さんが?」
乱菊はうれしそうに笑う。
すると冬獅郎の眉間の皺がさらに深くなった。
「女性死神協会でそう決めたのv」
「じゃあ、本人の意志は無視、ですか?」
「もっちろん。
本人がこんなこと了承するわけないじゃない。」
それを聞いて全員が『お気の毒に。』と、
心の中でつぶやいた。
どうやら女性死神協会の中から、
冬獅郎の女装が見たい、という声が多かったらしい。
「一護のミイラ男ってのは?」
「それも私たちが決めたわ。
一護ほど包帯の似合う男はいないからね。」
本人に異存はないようだからいいものの、
女性死神協会の近頃の横暴さは目に余る。
かといって男性諸君がどうこうできる問題ではなかった。
それに、一護に包帯が似合うというのは事実だ。
「恋次は狼男で白哉はドラキュラか。
白哉のドラキュラってのは似合いすぎだな。
自分で決めたのか?」
「まあな〜。」
白哉のドラキュラ姿はあまりにも想像しやすい、
肌はもとから白いし、なにやら薄暗い雰囲気もある。
棺おけの中から起き上がっても、なんら違和感もない。
そして恋次の狼男というのも十分うなずける。
女性が死神協会いわく『だって犬だし。』である。
「イヅルさんは…巫女さん…?」
「…それは市丸隊長が勝手に…。」
名前を登録する際、すでにその仮装をする、
と書き込んでいたらしい。
ちなみにギンは妖怪の九尾の狐で、一応、
その巫女さんの使い魔になっている。
イヅルの表情は少々暗い。
「でもなりきるんだったら市丸隊長はお前の言うこときく、
ってことだよな?」
「さあね。
あの人のことだからどうなるか見当もつかないよ。」
『はあ。』と大きくため息をつくイヅル。
「修兵んとこはマフィアと警官か〜。」
「ああ、うちは隊をマフィア側と警察側に分けてやるぜ。」
「乗ってますね〜。」
九番隊の全員参加とは、そういうことだったわけだ。
かなり大掛かりになるらしい。
それにマフィアと警官のカップルというのも、また、
要と修兵が好みそうなものだ。
悲恋になること間違いなしである。
「一角は…海賊?」
「十一番隊全員だ。
どうやら雑魚虚も入れるらしいから、そいつら相手に喧嘩さ。」
なるほど、確かによく見てみると、
剣八もやちるも海賊として登録されている。
さすがは、お祭り好きの十一番隊だ。
「京楽さんと伊勢さんは…軍服か。」
「しかも、伊勢副官は鞭装備だしね。」
「どうせならSM女王様でもよかったんじゃね?」
「七緒がんなことするわけないでしょ。」
かなり考えるに考えた結果らしい。
お色気系の仮装はすべて七緒に却下された。
社長と秘書という案もあったのだが、
それでは普段と変わらない。
結局、軍人とその部下、という、
ある意味あまり普通と変わらないような役割になったのだ。
「卯ノ花さんは貴族婦人か。
で勇音さんはその護衛の騎士。
四番隊は全員参加だろ?」
「ああ、だから全員で、
中世ヨーロッパの貴族の衣装を着るらしい。」
「…どうやって仕事するつもりっすかね。」
中世ヨーロッパの時代の貴族といえば、
煌びやかの極みである。
仕事をするとなれば、かなり邪魔になるだろう。
かといって四番隊の機能は必要不可欠である。
しかも、雑魚とはいえ、虚が入ってくるのだ。
「でも勇音さんの騎士姿はかっこよさそうだよなー。」
「あの子でかいから。
見栄えはするでしょうね。」
女性からの人気もかなりのものだろう。
「藍染さんと雛森さんは…ロミオとジュリエットかぁ。
ちょっと楽しみだな。
俺、シェイクスピア好きだからさ。」
「そういえばそうだったな。」
そして、まわりの席官たちも、
『ロミオとジュリエット』の劇の登場人物に仮装するらしい。
二人もおお張り切りだ。
普通、仮装用の衣装は女性死神協会を通じて頼めるのだが、
桃は自分の分と藍染の分は自分で作るらしい。
修兵も同じである。
「夜一さんは魔女で、砕蜂さんは黒猫か…
まあ、夜一さんの黒猫ってのはありきたりすぎだけど、
似合ってたとも思うな、俺は。」
「同感だよ。」
ちなみに、夜一の一番弟子は冬獅郎、
という設定になっているらしい。
夜一は別に賞品が目当てなのではなく、
ただ単に面白そうで砕蜂も乗り気だったため、
参加しただけである。
本来なら、出場者たちをひっかきまわす方が好きなのだ。
「浮竹さん…も出るのか!?
しかもルキアと二人で!?」
「説得にかなーり苦労したらしいぜ?」
浮竹とルキアの場合、
カップルというよりは親子という感じらしい。
実際のところ、浮竹が父親役でルキアが娘役だ。
しかし、これには白哉から相当の反対をくらったらしい。
結局、恋次も説得に参加して、
白哉がなんとか折れたのだ。
いまだに納得してはいないようだが。
「へ〜…けっこう楽しそうだな。」
一護は心なしかうれしそうだ。
今回はカップルだけではなく、
団体で出るものがほとんどだから、
前よりずっとにぎやかになるのは必至だ。
こういうお祭りごとは、楽しむに限る。
「ち・な・み・に。
こっちが、その他の人たちの仮装リストよ〜v」
乱菊が取り出したのは、もう一つの名簿らしきもの。
全員で覗いてみると、
運営係やら衣装提供係やらがついている。
『審査員:
射場鉄左衛門
| 暴走族
|
松本乱菊
| 夢魔リリム
|
浦原喜助
| 怪しい商人
|
ウルキオラ
| 大虚
|
平子真子
| おばけ
| その他:
狛村左陣(警備)
| シャーロック・ホームズ
|
山田花太郎
| 貞子
|
甲田鱗太郎(運営係)
| ジャック・オ・ランタン
|
石田雨竜(衣装提供)
| 理想滅却師衣装
|
井上織姫(衣装提供、飾りつけ)
| バニーガール
|
その他、空座第一高校手芸部面々(衣装提供)
|
猿柿ひよ里(飾りつけ)
| 鬼っ子
|
茶渡泰虎(音楽提供)
| フランケンシュタイン
|
グリムジョー(音楽、虚提供)
| ドラえもん
|
技術開発局(小道具、大道具提供)』 |
「ほとんど全員参加だね、これじゃあ。」
「だな。」
「チャドたちも出るのか…いいんですか?
瀞霊廷の機能麻痺しますよ?」
一護が尋ねると、乱菊はうれしそうに笑った。
「だいじょーぶv
虚園とも話をつけて、
そのときには虚の行動止めてもらうことになってるから。」
「あ、そういえばウルキオラとグリムジョーも、
ちゃんと載ってやがる。」
破面の二人だ。
さらに、よく見ると『仮面の軍勢』である、
真子とひよ里の名前まである。
どうやらこのイベントは、尸魂界、現世、
そして虚園まで影響しているらしい。
「ん?この甲田鱗太郎って誰だ?」
一護が見慣れない名前を指差した。
「ああ、この前の大会でもなんか鏡みたいなもんを持って、
あっちこっちうろうろしてたやついただろ?
こいつは二番隊の七席で、
解放時の斬魄刀の能力が千里能力、
遠くのものを映したり、映像を送信できたりするんだ。」
「ああ、カメラみたいなもんか。」
ふむふむ、と一護もうなずく。
便利な能力を持っているやつもいるんだな、と思いながら。
「ちなみに一護。
明日衣装合わせするから必ず来てねv」
「あ、はい。」
「隊長の魔女っ子姿も見れるからねv」
「松本!!」
けらけらと乱菊は笑うばかり。
一護は苦笑いしつつ、
『冬獅郎の魔女っ子姿ならかわいいだろうなぁ。』などと、
冬獅郎が聞いたら怒りそうなことを思っていた。
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